令和元年度住宅市場動向調査結果が公表

国土交通省は3月13日、「令和元年度住宅市場動向調査」の結果を公表した。この調査は、注文住宅、分譲住宅、中古住宅、民間賃貸住宅及びリフォーム住宅について、それぞれ住み替え、建て替え及びリフォームを行った世帯に対してアンケート調査を実施した結果をとりまとめたもの。このうち本稿では三大都市圏を対象とした民間賃貸住宅に関する結果について紹介する。

これによると、民間賃貸住宅における住み替えニーズは、1人暮らしの割合が増えて2人以下の世帯が約7割を占め、18歳未満のいるファミリー世帯が減少するといった特徴が見られた。そのため、部屋の広さはあまり必要とぜず、“駅近”など利便性を求める住み替えが一層進んでいる。

1.世帯について

(1) 世帯主の年齢

民間賃貸住宅入居者の世帯主の年齢別割合は、30歳未満が29.7%で最も多く、次いで30歳代が29.5%、平均年齢は39.2歳となっている。前年度に比べて30歳未満はやや減少、30歳代はやや増加となった。(図1)。

世帯主の年齢
図1 世帯主の年齢

(2) 居住人数

民間賃貸住宅入居世帯の居住人員は、1人が38.8%と最も多く、次いで2人が30.9%となり、2人以下の世帯が占める割合は69.7%と約7割を占め、平均居住人数は2.1人となっている。過去の推移を見ると、平成28年度から4年連続で1人世帯が増加し、平均人数も減少する傾向が続いており、今年度その傾向がさらに強まった。(図2)。

民間賃貸住宅の居住人数
図2 民間賃貸住宅の居住人数

(3) 高齢者と18歳未満のいる世帯

民間賃貸住宅入居世帯のうち、高齢者のいる世帯は11.0%となっている。その内訳は高齢者のみの世帯が55.4%を占めており、前年度と比べて増加した(図3)。
一方18歳未満のいる世帯は年々減少しており、今回は23.9%と前年度に比べても大きく減少した。

高齢者と18歳未満がいる世帯の内訳
図3 高齢者と18歳未満がいる世帯の内訳

(4) 世帯収入

民間賃貸住宅入居世帯の世帯収入は、「400万円未満」の世帯が34.6%で最も多く、次いで「400万~600万未満」が28.0%となっている。平均世帯年収は477万円で、昨年より減少した(図4)。

世帯収入

(5) 勤務先からの住宅手当

勤務先から住宅手当を受けている世帯は26.1%で、前年度から横ばいとなった。
一方、住宅手当を受けている世帯の平均手当額は月額32,054円であり、前年度と比べて減少した(図5)。

勤務先からの住宅手当の有無と月額
図 5 勤務先からの住宅手当の有無と月額

2.住み替えに関する意思決定

(1) 住宅の選択理由

民間賃貸住宅入居世帯における住宅の選択理由(図6)は、「家賃が適切だったから」が54.0%と最も多く、次いで「住宅の立地環境が良かったから」が51.6%、「住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから」が35.6%となっている。

過去5年間の推移を見ても、選択理由の上位3位の順位は変わらないが、今回は「住宅の立地環境が良かったから」という選択理由が昨年度(42.8%)より大きく増加した。
なお、18歳未満がいる世帯の割合が減少しているためか、「子育てに適した環境だったから」という理由は5.4%にとどまっており、2年続けて減少した。

住宅の選択理由
図 6 住宅の選択理由

(2) 設備等に関する選択理由

住宅の選択理由となった設備等として(図7)、「間取り・部屋数が適当だから」が67.8%と最も多く、次いで「住宅の広さが十分だから」が60.7%となっている。設備等については、主にこの2つの理由が大きく、前年度に比べてともに増加した。

このうち「住宅の広さが十分」とする回答については、後述の住み替え前後の延床面積(図11)では、住み替え後の方が平均面積が狭くなっていることから、広さを求めるニーズが多いということではない。
一方、選択理由の3位以下となる「浴室の設備・広さが十分だから」(29.4%)、「住宅のデザインが気に入ったから」(26.5%)、「台所の設備・広さが十分だから」(24.6%)の3つがいずれも前年度に比べて減少しており、上位2つの理由とより差が開く結果となった。

設備等に関する選択理由
図7 設備等に関する選択理由(複数回答)
住み替え前後の比較:高齢者対応設備及び省エネ設備
問8 住み替え前後の比較:高齢者対応設備及び省エネ設備

また、住み替え前後の高齢者対応設備及び省エネ設備の比較を見ると(図8)、「段差のない室内」や「廊下などが車椅子で通行可能な幅」、「浴室・トイレの暖房」といった、高齢者に限らず広くニーズがあると考えられる設備が、住み替え前より後の整備率が高くなっている。なお、省エネ設備については、住み替え前後で整備率が同じまたは低くなっているという結果であり、ニーズは多くはない。

3.住み替え前後の比較

(1) 家賃の比較

住み替え前後の月額家賃を見ると、平均73,251円から75,306円へと、約2,000円増加しており、住み替え後の平均家賃は前年度より約2,100円下がった(図9)。
また、家賃の負担感(図10)を見ると、「少し負担感がある」とする回答が49.7%と最も多く、前年度よりも増加した。「非常に負担感がある」及び「少し負担感がある」を合わせて57.8%が負担感があると回答した。

住み替え前後の家賃
図 9 住み替え前後の家賃
家賃の負担感
図 10 家賃の負担感

(2) 面積の比較

住み替え前後の延床面積を見ると、平均70.5m²から51.9m²へと、その差18.6m²、26%も減少している(図11)。より広い賃貸住宅への住み替えの割合は少なく、広さを求める層は賃貸から購入に移行するケースが多い結果と考えられる。

住み替え前後の延床面積
図 11 住み替え前後の延床面積

(3) 通勤時間等の比較

住み替え前後の通勤時間を見ると、平均で42.7分から35.0分へと7.7分短縮している(図12)。また、最寄りの公共交通機関までの距離については(図13)、住み替え前の1.6kmから住み替え後は1.1kmと短くなっており、鉄道駅等に近い賃貸住宅への住み替えニーズが強いことがわかる。
これらの傾向は過去5年間ほぼ同様であり、以上のことから、民間賃貸住宅の住み替えでは、通勤時間の短縮や駅に近いなどの利便性の高い地域に住み替えることを優先し、住宅の面積が以前よりやや狭くても構わないという考えで、住み替えるパターンが多い傾向が続いている。

住み替え前後の通勤時間
住み替え前後の通勤時間
最寄りの公共交通機関までの距離
図 13 最寄りの公共交通機関までの距離

住み替えニーズは2人以下の世帯が増加

以上の調査結果から、単身ないし2人の小世帯の割合が増加しており、子どものいるファミリー世帯の割合が減少している傾向が顕著となっている。そのため、住宅の広さは求めておらず、鉄道駅から近いなどの利便性のニーズが高く、逆に子育てに適した環境を求めるニーズは年々下がっている。
なお、超高齢化社会が進展するなかで、高齢者の単身ないし2人世帯が増えているものの、高齢者は持ち家が多い、あるいは同じ賃貸住宅に長期間住み続ける傾向があるため、本調査の対象である住み替えはあまり多くはなく、そのため、高齢者向け設備もさほどニーズが高くない。

三大都市圏においても、全体で見ればまだ世帯数が増加しているために、一定の住宅需要は維持されているものの、“駅近”などの利便性が高い立地の築浅物件は需要があるものの、立地等の条件が不利で、築年数が経過した物件は空室率が増加するなど厳しさが増している。
空室率改善のために、リノベーションが有効な対策として考えられるが、入居者のニーズやトレンドを踏まえて、立地や想定入居者層に応じた間取りや設備などを十分に検討し、入居率向上の見込み、適切な投資額と家賃設定等による長期事業収支の見極めの精度を、一層高めていくことが重要と考える。