令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果/国土交通省

国土交通省は3月19日、令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果(注1)を公表した。これによると、平成30年度の個人向け住宅ローンの新規貸出額は約19兆1千億円で微減、アパートローンの新規貸出額は約2兆7千億円で前年に比べて大幅に落ち込んだ。
また、JAの新規貸出においては、個人向け住宅ローンが件数、金額ともに大幅に増加しており、一方アパートローンの件数はやや減少し、金額はやや増加した。

1.個人向け住宅ローン

(1) 新規貸出

平成30 年度の新規貸出額は19兆1,358 億円であり、前年度までの2年連続増加から減少に転じ、1,517億円、0.8%の減少となった(各年集計(注2))。また、経年集計(注2)でも新規貸出額は対前年度比2.2%減となっている。
貸出件数は745千件で、前年度の増加から再び3.2%の減少に転じた。

図1 新規貸出額の推移(各年集計)

(注1)この調査は1,340の金融機関を対象として令和元年10月から11月にかけて実施され、1,285機関の回答(回答率95.9%)を得て、集計されたもの。
(注2)「各年集計」とは、各年度の実績の回答があった全ての機関につき集計したもの。
これに対して「経年集計」とは、対象年度の全ての年度の実績の回答があった機関につき集計したもの。

(2) 貸出残高

平成30 年度末時点の貸出残高は182兆2,100億円で、前年度から28兆1,758 億円、18.3%増加した。貸出件数は9,492千件で、前年度から675千件、7.7%増加した(各年集計)。なお、経年集計では、平成30 年度末の貸出残高は対前年度比7.3%増となっている。

図 2 貸出残高の推移(各年集計)
図 2 貸出残高の推移(各年集計)

(3) 業態別実績

新規貸出額についての業態別割合について、件数では地銀が31.0%(前年度31.1%)、金額では都銀・信託銀行他が31.6%(同32.1%)を占めて最も多い。

農協は新規貸出件数で6.6%(同4.1%)、金額で5.9%(同3.5%)を占めており、貸出残高でも件数で5.6%(同3.7%)、金額で4.4%(同2.9%)と、前年度に比べて大きく増加した。
農協では近年、賃貸住宅向けの新規融資に慎重になる一方で、個人向け住宅ローンが伸長していることから、貸出残高金額と比べて新規貸出金額でのウェイトが大きくなっている。

表 1 業態別新規貸出及び貸出残高(平成30年度末)

(4) 新規貸出額の使途別実績

新規貸出額の内訳については、新築住宅向けが71.4%(前年度69.0%)、既存(中古)住宅向けが19.2%(同18.4%)、借換え向けが9.5%(同12.6%)となっている。前年度に比べて新規住宅向けの割合が増加し、借換え向けの割合が減少した(各年集計)。

図 3 新規貸出額の使途別割合

(5) 金利タイプ別新規貸出

金利タイプ別の新規貸出額については、「変動金利型」が11兆3,240億円、全体に占める割合は60.5%(前年度50.4%)と、前年度より大幅に増加した。
一方、「固定金利期間選択型」の割合が24.3%(同31.0%)と前年度より大幅に減少し、「全期間固定金利型」5.3%(同6.2%)及び、「証券化ローン(注3)」9.9%(同11.8%)も前年度よりその割合は減少した(各年集計)。

図 4 金利タイプ別新規貸出額

(注3)証券化ローンとは、住宅金融支援機構による証券化支援(フラット35等)を活用し、又はフラット35等以外の証券化により売却済みの住宅ローン。

2.アパートローンの実績

(1) 新規貸出

平成30年度の賃貸住宅の建設・購入に係る融資(アパートローン)の新規貸出額は2兆7,002億円となっており、前年度より11,280億円、29.5%の大幅な減少となった(各年集計)。
なお、経年集計では14.6%の減少となっており、単年集計よりは減少幅が小さいものの、大幅な減少と言える。
件数も前年度比34.8%減と大きく減少したが、1件当たりの貸出金額は6,953万円と前年度比8.2%増となった(各年集計)。

図 5 賃貸住宅向け新規貸出額の推移(各年集計)

(2) 貸出残高

平成30年度末の賃貸住宅向け貸出残高は29兆7,725 億円で、前年度末より1兆3,767億円減少、件数は53万5千件で、前年度より4万1千件減といずれも減少したが、1件当たりの平均貸出残高は5,568万円と前年度比3.0%増となった(各年集計)。
ただし、経年集計では貸出残高が対前年度比3.0%増となっており、注意が必要である。

図 6 賃貸住宅向け貸出残高の推移

(3) 業態別実績

新規貸出額についての業態別割合については、全体のうち地銀が件数で33.4%(前年度34.5%)、金額で40.9%(同41.6%)を占めて最も多い。

農協は新規貸出件数において8.9%(同6.0%)、新規貸出額において9.6%(同6.2%)を占め、貸出残高ではこれより多く、件数で13.8%(同12.5%)、金額で12.5%(同10.9%)を占めている。農協ではこれまでの実績から、新規貸出金額より貸出残高金額でのウェイトが大きい。

表 2 業態別新規貸出及び貸出残高(平成29年度)

3.住宅ローンの商品ラインアップ

住宅ローンの商品ラインアップについて(表3)、19商品のうち、現在商品として取り扱っている割合が高いのは「金利タイプ(変動金利型)」(97.4%)や「金利タイプ(固定金利期間選択型)」(95.4%)、「疾病保障付き」(92.8%)等で、ほとんどの金融機関が扱っている。

また、「リバースモーゲージ」については、現在商品と扱っている金融機関がまだ8.0%と少ないものの、商品化を検討している金融機関が31.0%と多い。一方、「金利タイプ(全期間固定金利型)」は、取り扱っていたが廃止した割合11.1%と高い。

表3 住宅ローン商品のラインナップ

■新型コロナで変わる住宅ニーズとリスク対応

人口減少や賃貸住宅の過剰供給等によって、賃貸住宅の空室率が上昇し、経営リスクが高まっているとともに、金融機関の審査が厳格化して融資を絞る傾向が強まっていることなどを背景として、今回の調査結果ではアパートローンの新規貸出額が大幅な減少となった。

さらに、コロナ禍によって、緊急事態宣言が全国を対象に発出されるなど、国民の生活や経済活動は大打撃を受けることとなった。幸い欧米諸国に比べれば少ない死者数のまま感染拡大は沈静化し、5月25日に緊急事態宣言は解除された。しかし、新型コロナウィルスを撲滅することは困難との認識のもと、引き続き感染予防に努め、“新しい生活様式”の実践等が求められる。この影響はかなり長く尾を引くと見られ、住宅ニーズや住宅ローンについても、大きな変化が起こる可能性が高い。
住宅ニーズについては、在宅でのテレワークが普及することで、今後在宅ワークに適した環境や間取りの住宅のニーズが高まると考えられる。そのため、在宅ワークのための仕事部屋を確保できる広さや、自家用車での移動が中心となる郊外の住宅の人気が高まる可能性がある。

一方、住宅ローンについても、借りる側の意識が返済困難となるリスクに対して慎重になり、無理してローンを組むことを避ける傾向が高まるかも知れない。併せて金融機関も、デフォルト率上昇から、さらに融資審査が厳しくなることも考えられる。結果として、これまで賃貸から購入に移行していた層が、賃貸住宅にとどまり、賃貸住宅の需要が高まる可能性がある。
また、JA組合員の賃貸住宅向けローンにおいても、一層リスクを低く抑えた事業計画・返済計画が求められることとなるが、消極的になるばかりでなく、生活様式や住宅ニーズの変化に対応した賃貸住宅のプランの提案等、前向きなリスク回避を検討することも大切である。

コロナ後の社会を正確に見通すことは容易ではないが、コロナ禍を契機として大きな変化が起こるということだけは、かなり可能性が高い。その変化に対応することが、生き残りには不可欠となるだろう。