令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果/国土交通省

■新型コロナで変わる住宅ニーズとリスク対応

人口減少や賃貸住宅の過剰供給等によって、賃貸住宅の空室率が上昇し、経営リスクが高まっているとともに、金融機関の審査が厳格化して融資を絞る傾向が強まっていることなどを背景として、今回の調査結果ではアパートローンの新規貸出額が大幅な減少となった。

さらに、コロナ禍によって、緊急事態宣言が全国を対象に発出されるなど、国民の生活や経済活動は大打撃を受けることとなった。幸い欧米諸国に比べれば少ない死者数のまま感染拡大は沈静化し、5月25日に緊急事態宣言は解除された。しかし、新型コロナウィルスを撲滅することは困難との認識のもと、引き続き感染予防に努め、“新しい生活様式”の実践等が求められる。この影響はかなり長く尾を引くと見られ、住宅ニーズや住宅ローンについても、大きな変化が起こる可能性が高い。
住宅ニーズについては、在宅でのテレワークが普及することで、今後在宅ワークに適した環境や間取りの住宅のニーズが高まると考えられる。そのため、在宅ワークのための仕事部屋を確保できる広さや、自家用車での移動が中心となる郊外の住宅の人気が高まる可能性がある。

一方、住宅ローンについても、借りる側の意識が返済困難となるリスクに対して慎重になり、無理してローンを組むことを避ける傾向が高まるかも知れない。併せて金融機関も、デフォルト率上昇から、さらに融資審査が厳しくなることも考えられる。結果として、これまで賃貸から購入に移行していた層が、賃貸住宅にとどまり、賃貸住宅の需要が高まる可能性がある。
また、JA組合員の賃貸住宅向けローンにおいても、一層リスクを低く抑えた事業計画・返済計画が求められることとなるが、消極的になるばかりでなく、生活様式や住宅ニーズの変化に対応した賃貸住宅のプランの提案等、前向きなリスク回避を検討することも大切である。

コロナ後の社会を正確に見通すことは容易ではないが、コロナ禍を契機として大きな変化が起こるということだけは、かなり可能性が高い。その変化に対応することが、生き残りには不可欠となるだろう。