平成30年住生活総合調査結果

3.今後の住まい方の意向に関する事項

■今後の住み替え意向

今後の住み替え意向については(図9)、全世帯では19.7%が「できれば住み替えたい」とする意向がある。このうち、持ち家は72.6%が「できれば住み続けたい」としているのに対し、借家は38.7%が「できれば住み替えたい」としている。
借家の中では、「共同住宅」(42.6%)、さらその中でも「3~5階」(46.1%)の中層マンションが最も住み替えたい意向の割合が多い。

図 9 今後の住み替え意向

■今後の居住形態

今後の住み替え意向について、居住形態(持ち家・借家)を現在の居住形態別に見ると(図8)、「現在持ち家の世帯」は、「持ち家への住み替え」意向が67.2%、「借家への住み替え」意向が13.1%となっている。「現在借家の世帯」は、「持ち家への住み替え」意向が34.4%、「借家への住み替え」意向が43.0%となっている。
経年変化で見ると、平成15年時点では53.9%を占めていた「借家から持ち家への住み替え」意向が減少し、「借家から借家への住み替え」意向が増加しており、平成30年では逆転した。

図 10 今後の居住形態(持ち家・借家)

■借家などへの住み替え上の課題

借家などへ今後の住み替え意向のある世帯が持つ住み替え上の課題については(図11)、「資金・収入等の不足」が54.6%と最も多く、次いで「予算の範囲内で気に入る物件がない」が26.8%、「希望エリアの物件が不足」が26.6%などとなっている。

持ち家から借家へ住み替える場合も、同様に「資金・収入等の不足」が最も多いが、2番目には「現在の住まいの売却・賃貸」が43.4%と多くを占める。そのほか「相談できる専門家がいない」についても15.1%と、借家から借家への住み替えに比べて多くの割合を占めている。

図 11 借家などへの住み替え上の課題(現在の居住形態別)

4.コロナ禍の影響による住生活の変化

この調査時点は平成30年12月であり、当然コロナ禍以前のものである。その後のコロナ禍によって住生活に関する意向や行動にも大きな変化を及ぼしている可能性が高い。

1つは、民営賃貸住宅の住み替え目的の筆頭にも挙がっていた「通勤・通学の利便」(図6)については、リモートワークが増えたことや、都市中心部は“密”になりやすいことなどから、その優先度は下がることが予想される。

また、景気の大幅な後退等を背景として、すでに今回の調査でも多くの割合を占める(図8)家賃負担の軽減等の経済的な理由での住み替えも増加すると考えられる。よって、通勤の利便の優先度が下がることと併せて、郊外の比較的家賃の低い住宅への住み替えが増加することが見込まれる。

賃貸住宅の新設やリフォームにあたっては、本稿の調査結果を参考にしつつ、併せてコロナ禍による変化を捉えながら、慎重に検討していただきたい。