地方圏の生産緑地制度 導入の勧め(6)先進事例のポイント

特産振興 糸口に実現

地方圏では現在までに市町村で生産緑地制度が導入されている。中でも2006年に制度導入した和歌山市は、19年度末現在で82ha、287地区と、地方圏では最も多くの生産緑地を指定しており、地方圏の生産緑地面積のうち実に3分の2を占めている。

同市では特産品のショウガが市街化区域内で多く生産されており、農業振興上の重要性も高い。リーダー的存在の農業者が市に対して繰り返し要請するとともに、大学教授や新聞とも連携し、制度の理解を広げながら運動を進めた結果、制度導入に至った。その後の指定も拡大している。

近年では19年に高知市が、20年には広島市が生産緑地制度を導入した。これら地方の県庁所在地の多くは、大きく設定した市街化区域内に多くの市街化区域農地が残っており、おおむね固定資産税額も高いことから同様な課題を抱え、制度導入の機運が高まっている。

広島市では、広島菜という特産品が市街化区域内で多く生産されており、農業者、JA、行政が協調しながら都市農業振興を目的として進めた結果、制度導入に至った。JA広島市とJA安芸の市内2JAが都市計画協力団体の指定を受け、生産緑地指定の申請募集、都市計画提案、同意書の提出および指定後の農地管理などの役割を担うことで、行政の負担軽減と制度運用の円滑化を図っている。

この3市では、法定要件以外に独自の指定要件を設けている。和歌山市と高知市は接道要件を設け、両市は主たる従事者の年齢が60歳未満または60歳未満の後継者がいることを要件としている。

農業経営に関しても、高知市は経営耕地面積4000m²以上、和歌山市は経営耕地面積3000m²以上または農業の年収が50万円以上、広島市は販売目的の農作物の生産を要件としている。

これらの独自要件で指定のハードルを上げることは、都市農業の多様な機能の発揮の観点からはあまり意味がないことであり、市民農園なども含めて広く都市農地を指定できる要件とすることが望ましい。

(日本農業新聞 2021年5月12日掲載)